【レポ】六郎峠の想い出…。

 私の愛車。アルミチューブラーポタ車です。

 串本駅を出発して一路、六郎峠を目指します。

 やっとこさで着いた六郎峠です。

 一雨の集落に降りてきました。

 この橋を渡って古座の町へ向かいます。

 夏休み真っ盛りでカヌーを楽しむ人がちらほらと…。

 古座の町並みが見えてきました。

 澄み切っている古座川。

 古座から沖にクロシマが見えます。

 太平洋が広がります。

 串本町大島付近。マグロの養殖で有名な近大の水産試験場。

 大島へ上陸です。

 大島のトルコ記念館です。

 樫野崎の灯台です。

 とにかく暑い! 倒れそう。

 海金剛への遊歩道を行きます。

 海金剛です。




私は、根っからの峠好きです。今までにいくつもの峠に接して来ました。中でも特に思い入れの深い峠を今日はご紹介します。

名前を六郎峠といいます。

今は、国道371号の南端。和歌山県は串本町に属します。この峠道は、幼いころ、家族でタクシーを借り切って、夏に泳ぎに行った想い出の川遊びの土地でもあります。そして、その時、母から聞いた昔話が印象的で強烈に私の脳裏に残っていて、どうしても自転車で越えてみたい峠となりました。

時は、2005年8月の真夏のある日。
蝉しぐれがやかましいくらいの炎天下。独りのおっさんが串本駅に降り立ちました。さっそく輪行袋を広げ、愛車を組み立てます。本日の愛車は、完成間もない700Cチューブラータイヤを履いたパスハンターであります。分類不明になるような部品仕様なのですが、ギアが一応TAの44x32T、リアも13-32Tと超ワイドレシオです。それに空気圧をカンカンにしてあるチューブラータイヤの組み合わせは、非常に走行感が軽く、走っても持っても、担いでも軽いのコンセプトの元に作られたわけです。実際、重量は9キロほどしかなく輪行に際しましても、ほとんど負担にはなりませんでした。

さて、マシンのことはさておき、この六郎峠。母の昔話がおかしいのです。その昔、この峠は、今の国道の元となるべく道をつけるために発破工事の真っ最中なのでした。そして、この発破の際にできる切り通しの両側の地層にそれは、様々な化石が含まれていたのでした。私なども小学生の頃、この峠近くに祖母の家があったのでよく立ち寄っては、裏の畑から産出する様々な化石に魅了され、そっと木箱に分類して、図鑑で名前を調べたりして、悦に入っておる小学生だったわけです。

この六郎峠の途中、坂道が急になりかかるあたりにヨウクロウというお地蔵さんがありました。どういうわけか、そのお地蔵さんの花受けには、筒状の植物化石が使われていました。これに目を付けたのが、当時、串本町で下駄屋を営んでいた男。この男、実家の商売にはまったく関与せず、嫁まかせ。そして、自分はせっせと日頃より、近隣の山中などに分け入り、化石発掘三昧…。家人の苦言も平気で、商売そっちのけで、化石を探して毎日うろついていたところ、このヨウクロウのお地蔵さんの化石に目を付けた、というわけ。

そして、ものがお地蔵さんだけに黙って持っていくわけにもいかず、村のお地蔵さんをよく世話している人の家に日参し、あの手この手で口説き落とし、とうとう、この植物化石を我が物にしたと…。

私は、その当時のこの男のどうしようもないマニアぶりがおかしく、振り返って、我が自転車道楽と共通するものがあって、おかしくておかしくてたまらないのでした。

私なども、亀甲の泥除けが…、とか、アルミ削り出しの滑車千鳥がどうしても…、とか。欲しいとなるとなりふり構わず、寝ても覚めても…。という塩梅ですから、この男のとった行動にも非常に共感するわけです。


蝉しぐれがあたり一体に鳴り響いております。ヨウクロウのお地蔵さん前にて、私は、独り自転車と共にたたずみ、この昔話を思い出して、独りニヤニヤしておったわけ。

さて、行くか…。

よっこらっしょ。と自転車を持ち上げ、到底乗って行ける勾配は過ぎているので、押しの一手で峠まで着きました。

六郎峠。昔は炭焼きの人がよく炭俵を担いで町まで売りに行っていたのだとか…。その当時は、険しい山道で狼の出没する噂もあったといいますから、相当に秘境だったのでしょうな。

峠から北側は急傾斜になっていて落ちるような勾配の坂道がつづら折りとなって続きます。一期にダウンヒルでさっきかいた汗を吹き飛ばし、一雨(いちぶり)というユニークな名前の集落に着きました。ちょっと先に司馬遼太郎氏の別荘がありました。蔦かづらのからまるいかにも文豪の館というにふさわしい風格の建物でした。

そこから、小川という支流と合流するあたりの橋を渡り、河口までのんびりとペダルを回します。時々、家族ずれが川遊びに興じておりますな。カヌーをする人や、キャンプする人。皆、各々夏の一日を楽しむのでした。私は、クソ熱い中、独り黙々と自転車に乗ってます。この日、一人もサイクリストに出会わなかったのが寂しいと言えば、寂しいです。

国道42号沿いに海岸沿いを走り、海風を受けながら、串本町へ舞い戻りました。そして、今度は、大島へ橋を渡って上陸し、樫野岬で名物のキンカンアイスを食べ、そして、海金剛に立ち寄り、串本駅から車中の人となりました。本日は、走行距離は大したことなし。ただ、あまりに熱くて、最後の大島の坂道で死にましたw…。

ま、今も昔もコレクターというものは、変人が多いというわけです。
遠い昔のポタリングをつい回想してしまいました…。^_^;

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