猛烈な風というと思い出す琵琶湖あたりのこと。




もうかなり昔になるが、新調したてのチューブラーを引っさげて、はるばると輪行で大津あたりに参上した。そこから組み立て、走り出した。走り始めから天気が悪く雨足が弱まったり強まったりで、さっぱりペースがあがらない。

琵琶湖の空は鉛色で、寒々としている。この琵琶湖一周を思い立ったのは、まだ若かった頃、自転車乗りとして一度はやらないとという妙な使命感に燃えてのことだった。しかし、根っからのツーリストの私は、一日でがむしゃらに走るというようなもったいないことはしない。都合3日もかけてののんびりツーリングとなった。

今、窓の外は台風19号の激しい風で嵐の状態である。この風というと、上記の琵琶湖行きを思い出すのである。この日は、雨で雨宿りができるところを見つけると、止まって休憩という牛歩戦術である。もうこの日の宿は決めていて、近江八幡のYHとなっていた。距離もしれている。瀬田川あたりで道に迷う。川沿いに行ってしまい、どんどん琵琶湖からは離れていくことになった。焦る。湖という景色ではない、と判断したあたりからUターンし、湖岸道路を探す。行き当たるとどっと疲れが出た。

近江八幡市に入る頃より日没となり、あたり一面真っ暗となる。頼りないLEDの光でなんとか目的地を目指すが、ここ湖東の地は、だだっ広い平地で土地勘もなく、湖岸道路だけが頼り、とうとう白旗で、YHに電話した。ちょっと遅れます…。

気落ちする。今日中に着けるのだろうか? 湖岸道路に戻ってからは交通標識だけを頼りになんとかYHに到着。深く安堵の一日であった。

翌朝である。もう朝から風がすさまじく、湖岸道路に出ると、吹き飛ばされそうなくらいに吹いている。湖を吹く風は何も遮るものがなく、まともに吹き当たってくる。張り手で押し返されているような感覚とでもいうのだろうか。今日の台風のような日の風を受けると、とたんにこの日の向かい風を思い出すのである。

踏んでも踏んでも進まないもどかしさ。どんどん時間だけは経過する。次第に体力を奪われ、なんとか湖北を回って近江高島まで来たら雷鳴。土砂降りとなる。しばし近場の鉄鋼所に避難し、雨宿りをする。ちょうど、隣にも同じようなビワイチのライダー氏が避難している。ちょっと会話する。雨が弱まってから目星を付けておいた宿に連絡する。部屋はあるという。ありがたい。向かうことにする。

クラブの合宿か何かで来ている中学生の団体が隣部屋でうるさくて、なかなか寝付けない。まあ、いい。外は雨が降っている。

翌朝、愛車に付いた雨露を振り払い、チューブラーのエアを確認する。異常なし。行くことにする。堅田あたりまで来るともう戦意喪失である。

雄琴、と順調に走り、また元の大津に戻る。ここで愛車を袋詰にし、輪行で帰った。

後にも先にもこの三日間ほど風に悩まされ続けたツーリングの思い出はない。この日以来、プロフィールマップ以上にその日の風向きを気にする癖がついたのであった。
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