連休は古座あたりもいいな…。

早朝4時頃、寝ぼけ眼で耳を澄ますと、外がどうやら土砂降りの様子だ。
マシンガンのような雨粒が屋根やそこらを叩きつける音がしている。以前、サイクリング途中にこのような雷雨に遭い、急いで近くにあった農作業小屋に逃げ込んだ記憶がある。外で楽しむ趣味の場合、突然の雷雨は最悪だ。落雷があるかも…、という恐怖感で一刻も早く屋根のあるところに逃げたい、と思う。
偶然、道端にあった避難小屋のようなところは別天地で天国だ。しばらくしても雨の止む気配はなく、ようやくトタンを叩きつける音が弱まったのを機に、外へ出てみると、周囲の山はまるで中国の水墨画のような塩梅である。
 ●在りし日の古座街道…。↓
20090919_古座街道ポタリング
そう、紀南地方も雨が多い土地として有名である。
古座街道は好きな道で、しばしば、私は、周参見あたりまで輪行して、そこから愛車を組み立て、山中に分け入る。しばらく行くと、もう人家の気配は途絶え、深山幽谷である。道端の切通面に苔がびっしりと生えていてビロードのような風景になっている。よほど雨が年中多い証拠だ。

苔の含む水の匂いがいい。いいかげん、足もくたびれ息も上がってくると、愛車をそうした切通面にもたせかけ、ペットボトルを一口二口…。足元をみると、延々麓から登ってきた峠道が見える。このへんまで走って来てもまだ一台も車と対面しない。筆舌に尽くしがたい秘境というのが、紀伊半島には残っている。国土軸からもはるかに遠いため、車もそう多くやってこない。ここら辺りまでくると、自然も本物である。観光客目当てのけばけばしいテーマパークもどきの施設もない。

静寂である。頂上のトンネルに着くと、ココにも両面苔がびっしりと生えている。中は薄暗くLEDライトを点灯し、走り抜ける。風が心地よい。タイヤの反響音がトンネル内に響く。抜けると七川ダムである。ここにも一軒宿があったのだが、どうやら今は閉まっているようだ。

佐田といわれるその地区は、寒村であり、人口はわずかだ。昭和の匂いのする郵便局があり、いつもその前に愛車をもたせかけて記念撮影でご満悦だ。

ここ七川ダムあたりは今は、バス釣りの隠れスポットである。ただ、都会からもあまりに遠距離なので、釣り客は限られる。壺中天地とはこういう場所を言うのだろう、と思った。

やがてしばし仙境にて休憩して、ちょっと下ると美女湯温泉というのがある。林道工事中に偶然湧き出たとかのいわくつきの温泉である。硫黄の匂いがあたりに漂い、そこが温泉であることを強烈にアピールしている。ちょっと建物から離れた場所にある源泉は湯が溢れ放題になっていて、よく見ると、水面に湯の花が浮いている。

大人300円のそれは、昔のジャンプなんかのマンガ本が畳敷きの休憩所に置いてあり、寝転がって湯上がりにしばし、ロングの休憩となるのである。懐かしい、昭和の時代を思いつつ、しばし、旅人気分で美女湯温泉を堪能する。ここから三尾川までの川沿いコースもまた、素晴らしい。

そして、本当のディープな古座川を楽しみたいなら、今どきの新道371号を走るのではなく、ぜひ川に沿って延々と伸びている旧道を走るべきである。見える風景が中国の桂林のような風景で地形輪廻でいうところの老年期のそれは、まさに水墨画の世界そのものである。

やがて立合を過ぎると、川の右岸に奇岩が見えるようになる。それぞれに名前がついていていわくつきの奇岩である。これらを眺めながら、のんびりと下る。そして、かなり下ると明神。この辺りに一雨(いちぶり)という珍名の土地がある。私が、いつも気になって立ち寄る場所だ。カヌーでここを下ったことがあるが、急カーブは渦が巻いていて、スリリングな古座川のイチオシ場所である。

やがて、下ると、支流の滝の拝への分岐点になる。ここから南は月野瀬といって、親戚の話によると、なんでもUFOの目撃談が多い場所とかで、有名だとかw…。それにしても月夜にココを走っていると、まさにUFOに遭遇しそうな気がしてくるから不思議だ。

やがて、河口付近。JRの鉄橋が見えている。あのへんがだいたいカヌーツアーの終着点だ。川下りも今がシーズン真っ盛りで子供らの歓声が聞こえそうだ。今頃はさぞ、にぎやかなことでしょうな。

ということで、来る連休に向けて過去を夢想していたら、また、急に古座の清流の風にあたりたくなってこうしてランドナーのハンドルを古座に向けようか、どうしようかと思案しているのである。天気が良ければ、最高のサイクリングになるだろう…。
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