雨のサイクリングの思い出話。

深夜二時半。外は台風14号の影響で雨がザーザーと降っている。雨の音を聞いていると遠い昔にやった南部から印南へ抜ける峠道途中にある鶴の湯温泉を思い出す。

以前は、これでも天気予報が少々悪かろうが、サイクリングに出かけていた。輪行もよくやっていた。できたてほやほやの丸タイヤ車を引っさげて、JRきのくに線の南部駅に降り立った。南部という町は、地理的に好きな町である。私は、昔から海、山、川と揃った町に住みたいな、と前から考えていて南部は日置川町と並んで理想郷なのである。それで、ちょっと足を向けてみた次第。

北の御坊駅から走ったこともあったが、この日は南の南部駅からである。

梅の産地だけあって、梅干し工場が立ち並ぶ。梅の香りがどことなくしてくる。駅前から山間部に向かう。南部川沿いに遡るあたりからポツポツと来出した。嫌な予感。やがて道はR424から分かれ、県道30号になる。ちょっとした峠を越えるようだ。峠を越えた先は印南町。カエル橋のある駅のある町である。大した距離ではないが、このままではじきに本降りになるな、と思われた。

地図を取り出し、見ると鶴の湯温泉というのが目に入った。もうそろそろ腹も減ったしで、ここで昼食とするか。しかし、温泉とあるからには浸かりたいなと思う強烈な誘惑に負ける。そうと決まれば、一目散。

いよいよ本降りになってきだして、峠道をグイグイとプロダイクランクを踏み込む。あるときはダンシング。ちょっとの距離で、鶴の湯温泉に到着。その日は平日だったためか、結構空いている。温泉旅館の玄関口横に愛車を持たせかけ、入る。

まずは濡れた身体をタオルで拭く。今日は軽装であるが、ポンチョなので、まだ、難を免れている。しかし、冷えた。早く風呂に入りたいが、空腹なので、何か食いたい。案内看板を見ていると茶粥定食というのが目に入った。ほぉー、お釜のような茶粥が煮立つようになっていて、他には定番の梅干しやら、山菜やらが付いてくるようだ。これにしようか。

席に着く。冷えた身体に茶粥は染みる。もとおと茶粥は大好物で、家でも時々食べる。それに金山寺味噌が添えられていて、これがまた合うのである。フゥフゥと煮え立つ茶粥と格闘しながら、食う。もっとも温泉旅館であるがゆえ、コース料理など召し上がると結構な金額になるのでご覚悟を!

自転車でこの山間の温泉にやってきた珍客を珍しげに隣のお客が見ていたな。(゚∀゚)

BMWなどの高級外車が泊まっていて、泊り客の車だろうが、結構県外ナンバーがあった。

他に客はおらず、お風呂も空いているようである。ついでに冷え切った身体を温泉で温めよう。食べ終わると温泉に浸かる。 気になる温泉の効能であるが、

鶴が羽を休め、傷を治したと伝えられることから名付けられ、炭酸水素ナトリウムを多量に含み、切り傷や疲労回復に効果があります。

とある。鶴の姿は見かけなかったが、たぶん、昔はのどかな田舎の温泉だったのだろう。

さて、温泉は茶褐色で、熱い。それにシャンプーやボディソープが洒落ていた。

すっかり温もった私は上機嫌で出た。しばらく畳の部屋にて休む。外はまだ雨がソボついている。ポンチョを一払い。さて、行くか…。

峠はもうちょっとで終わり、後は印南へ下るのみ。しかし、外は雨の中、温泉露天に浸かるのはなかなか風情があってよろしいですな。次回は母もドライブで連れてきたやろう、とこの時思ったのであった。

(=^・・^=)

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